犬と猫…ときどき、君

教室に入り、出席番号順に用意された自分の席に腰を下ろした私は、頬杖を付き眉根を寄せながら考えていた。


“芹沢さん”だろうと“胡桃ちゃん”だろうと、別にどっちでもいいんだけどさ……。

そう思うのに、何故か心が重たくなる。


やっぱり、そんな簡単に理解者は現れないか。

下を向いていた顔をゆっくりと上げ、ノートを取る為にシャーペンの芯をカチカチ押し出す。


「ねぇ!」

「……え?」

気を取り直したところで、急に隣から小声で話しかけられた私は、黒板からその声の主に視線を移した。


「消しゴム貸してー!!」

「え?」

「忘れたの!」

「……」

「お願い、貸して!!」

隣を見ると、入学式からずっと空席だったその席に、女の子が座っていた。


「あ。消しゴム、もしや懐かしのおまじないとかしてる!?」

「はっ!?」

「好きな人のイニシャル書いて、使い切るまで誰にも触られないと――」

「してないっ!!」

「じゃーいいじゃん! 貸してよー」

しかも、妙に馴れ馴れしい。


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