犬と猫…ときどき、君

「今回は、来るらしいよ~?」

まるで私の頭の中を透視でもしたかのようなマコの発言に、ちょっと慌ててしまう。


「だ、だから何よ! 別に城戸君が来ようが、私には関係ないし、行かないし……」

「誰が“城戸春希”の話したの~?」

「へっ!?」

「私、一度でも城戸の名前出したっけー?」

「……」

「うふふー」


その笑い方、すっごいムカつく。


「冗談。城戸は来ないけど、取りあえず胡桃は来なよ」

「えー……」

別に城戸春希が来たところで行くつもりなんてないんだけど、居たら居たで他の人よりは話しやすい。

だってあの人、合コンとか女の子とかに興味がなさそうだし。

その城戸春希さえ来ないのに、どうして私が行かないといけないの。


――だけどマコは、やっぱり私よりも何枚も上手だった。


「学食、三週間分」

「……行く」

この前マコと行った服屋さんで見つけた、可愛いワンピース。

マコが提示した“学食三週間分”でそれが買える事を、彼女はちゃんと知っている。

それで流される私もどうかとは思うけれど、でもあれは確かに可愛かった。

うん。
致し方なし。

未だに自分の中でちょっと格闘している私を尻目に「商談成立~♪」なんて、鼻歌交じりに口にしたマコは、カバンから携帯電話を取り出し、どこかに電話をかけた。


「あ、もしもしー? 篠崎ー?」

相手はどうやら、篠崎君。

「うん。無事確保ー! はいよー! そっちも宜しく~。じゃーまた後でね~」

「……」

「よしっ!」

「私、彼氏探しはしないからね。ゴハン食べて帰るからね」

電話を切ったマコに、また唇を尖らせて、諦め悪くそんな事を言ってみる。


「わかってるって。今まで通り、あんたは女子席に花を添えて、端っこで枝豆とホッケを突いてればいいから」


人を中年オヤジ扱いしたマコは「そうと決まれば早速準備ー!」なんて浮かれて、溜め息をこぼす私の腕を掴むと、化粧直しにトイレに向かった。

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