犬と猫…ときどき、君


「ひどいですよ、胡桃先生!!」

「ホントですよー!!」

「何で言ってくれなかったんですかー!?」


医局に戻って準備をして、診察に向かったら、診察室裏のスペースには相変わらず元気なアニテク三人娘。


「あっ!! ハルキ先生ー、聞いて下さいよー!!」

「はいはい、何ですかー?」

「胡桃先生、彼氏出来たらしいですよー!!」

「……」

「聞いてますか!?」


あー、なんだコレ。


「聞いてますよー。てか、知ってる」

「えー!! 何で知ってるんですか!?」

「俺の友達だから」

「そうなんですか!? どんな人なんですか!? 胡桃先生教えてくれなくて」


キャーキャーと楽しそうに騒ぐ子供らの後ろで、目が合った瞬間、なぜか申し訳なさそうな表情を浮かべた胡桃。


――大丈夫だよ。

そんな顔しなくたって。


「いい奴だよ」


ホントにそう思う。

悔しくなるくらい、いい奴で……。


「性格じゃなくて、顔は!?」

「お前らなぁー……。顔もかっこいいんじゃねーの? 俺の次くらいに」

「えー、何ですかそれー! でもいいなぁー!!」


“いいなぁ”……か。


「ほら。診察始めないと、鬼軍曹が検査室から飛んでくるぞ」

「はぁーい」


胡桃が好きで、この病院が好きで。

楽しそうに働くみんなを見ていると、やっぱり迷いが生じてしまう。


俺がこれからしようとしている事で、幸せになるやつって誰なんだろう?――って、どんだけマイナス思考なんだろうな、俺。

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