犬と猫…ときどき、君

病院に着くと、こんな日に限って朝から急患がきたり、大きな検査が入ったりで大忙しだった。


でも、その方がいい。

バタバタと動き回っているうちは、余計な事を考えなくて済む。


だけど、やっと入れた昼休憩の時間は、やっぱりそうはいかなくて。


「はぁー……」

……あ、しまった。

昼飯のカップラーメンを啜りながら、無意識に溜め息を吐き出して、ハッとした。

案の定、顔を上げた瞬間、真正面の席に座る胡桃と目が合ってしまう。


「芹沢ー」

「ん?」

「俺さー、すげぇ後悔してんだけど」

「……え?」

「シーフードじゃなくて、カレーにすればよかった」

「はい?」

「いや、コレ」


そう言って、手に持っていたハシで湯気が立つカップラをさせば、目の前の胡桃は呆れたような顔を俺に向ける。


「もう一個食おうかなぁ。太るかな?」

「知らないよー。てゆーか、そんな事でそんな盛大な溜め息吐かないで!」


「ビックリするじゃん」って、クスクス笑う胡桃は、やっぱりもの凄く可愛い。


あーあ……。

溜め息の本当の理由なんて、伝える気は毛頭ないけどさ。


「俺にとっては大事なことなんだぞ」

「えぇー」

「分かってないなぁー、お前は」

「分かりたくもないんですけど」

「あっそ」


ホント、分かってない。

いや、分からなくていいんだけど。

それがどれだけ大事なことなのかなんて、当たり前だけど、やっぱり言葉にしないと伝わらない――……。


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