犬と猫…ときどき、君
「胡桃ちゃん」
「うん」
「好きだよ」
「……っ」
「大好き」
私に向けられる、真っ直ぐな瞳。
――あぁ、胸が痛い。
「“サトルクン”……彼氏なのかと思ってた」
「違うよ。誤解しすぎ」
「そっか……って、何で泣くんだよ」
クスッと笑った彼の言葉で、自分が泣いてることに初めて気が付いた。
「何でだろ」
本当に、何でだろう。
笑いながら泣く私を見て、城戸春希は今度は困ったように笑うと、私の涙をその綺麗な指で拭って。
もう一度……
「好きだよ」
柔かい声でそう告げ、ふわりと笑ったんだ。
「胡桃ちゃんは?」
「……好き」
「足りない」
私の言葉に頬杖を付いて、彼はいたずらっ子のように笑う。
「城戸君が好き」
小さく鼻をすすって口にした言葉に、
「“好き”かぁ……。まぁ、まだそのくらいでいっか」
一人で偉そうに頷くと、やっと満足そうに目を細めて嬉しそうに笑った。