犬と猫…ときどき、君

悲痛な叫びに、胸が痛くなった。

この子は本当に春希が大好きで……。

きっと今まで起こしてきた全ての行動は、私の卑怯さと、自分の気持ちを春希に分からせる為。


「……松元さん」


その気持ちは、痛いほどに伝わった。

言葉が真っ直ぐすぎて、私には鋭すぎて、泣きたくなるくらい。


――でも。


「私は、あなたに憧れていたの」

「え……?」

私だって、どうしても言いたいことがある。


「いつも可愛くて、女の子らしくて。あなたみたいになりたかった。だけど――……」

視線を上げた私に、松元さんが息を飲む。


「私はやっぱり、あなたのした事が許せない」

彼女の気持ちに同調してしまう自分も、心のどこかにいる。

だけどそれが正しいことだなんて、絶対に思わない。


「私だけを傷付ければよかったのに、マコまで傷付けたのはどうして? 篠崎君を傷付けたのはどうして?」

「……」

「春希を傷付けたのは、どうして?」


口を閉ざしたまま、一向にそれを開こうとしない彼女は、どれだけ私の言うことを理解しているのか。


「結局それって、全部自分を守るためでしょう?」

「――……っ」


< 581 / 651 >

この作品をシェア

pagetop