犬と猫…ときどき、君

こんなことは初めてだった。

診療中は別にしても、いつも心が休まっていたこの場所で、こんな気持ちを抱くなんて。

“怖い”

“一人になりたくない”

“でも、家に帰るのも怖い”

毎日が、これのくり返し。

そんな私を気遣って、「大丈夫」という私の言葉を無視した春希は、休みも取らずに病院に来てくれていたし、家にはマコが来てくれて……。

そんな生活を2週間ほど続けていると、それまでのことが嘘だったかのように、起こっていた気持ちの悪いことがピタリと止んだ。

だから、もう大丈夫だと思った。

大丈夫だと思ったし、その日はみんながバタバタと忙しかったから……。


「あれ? アーツェがないや」

注射用の薬が切れていることに気が付いた私は、仕方なしに、一人でその保管場所である医局内の倉庫に向かったんだ。

< 635 / 651 >

この作品をシェア

pagetop