犬と猫…ときどき、君
「ねーねー、織姫と彦星は?」
「あー?」
「どれとどれ?」
「……」
「ん? なに?」
「いえ。何でもないですケド」
あれから、腕を掴んで、寝ころんだままだった私を起き上がらせた春希は、しばらくぼーっと星空を眺めていた。
つられて天を仰ぐ私に、ポツリと言葉を落としたのは、きっとそれから十分以上は経った頃。
「戻りますか」
ゆっくりと立ち上がった春希は、パタパタとお尻に付いた葉っぱを払うと、
「ん」
笑いながら、私にそっと手を差し出したんだ。
来た時よりもほんの少し涼しくなった道を、二人で手を繋いで歩きながら、私は首が痛くなるほどの勢いで空を眺めていた。
見上げた夜空には、ものすごい数の星が集まって、長い長い光の道を作っていて。
「天の川あんだろ?」
私の“織姫·彦星質問”に、春希がそれを指差した。
「うんうん」
「で、はくちょう座あんだろ?」
「え? はくちょう座ってどれ?」
「……」
「ん?」
「お前、星好きだっつってたじゃねーかよ!!」
「“好き”と“知識がある”は違うもん。てか、春希が詳しすぎる」
私の半ば開き直ったような発言に、呆れたような視線をよこした春希は、立ち止まり、顔を寄せて再び空を指差した。
「あの辺に、ビカビカしてんのあるだろ?」
「……何となく、うん」
「その右斜め下らへんに、もう一個ビカビカしてんのわかる?」
「ねー、春希。“ビガビガ”って表現、変だと思う」
「……」
「何でもない。で?」
「その“ビガビガ”がベガだから――織姫か。で、天の川挟んで、左下にあんのが彦星」
「ほぇ~……」
上を向いて、思ったままの言葉を口にした私に視線を落とした春希は、
「絶対、お前の言葉の方が変だぞ」
そんな失礼な事を言いながら、相変わらず楽しそうに笑っていた。