面倒くさい恋愛劇場
 「あの。どうしてわたしだと?」

 思わず口にした台詞に言葉が足りなかったのは、わたしが悪い。
 わたしとしては「どうしてわたしだと思ったのか」と訊きたかったのに、相手にしてみれば「どうしてわたしだと分かったのか」と訊かれていると思ったのだろう。
 だけど、明らかに怒っている相手(しかもイケメン)に睨まれて、冷静な対応なんてできるわけがない。

 (怖いっ。怖い怖い怖いよー!!)

 涙目になったところで可愛くない歳だという自覚はある。
 でも、怖いんだから仕方がない。
 唸るような彼の声に、逃げ場を失ったわたしはへたへたと地面に座り込んだ。
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