面倒くさい恋愛劇場
 「認めるんだな」
 「え?」
 「俺の行く先々で現れやがって。ある範囲内でしか見かけないなら、多少行動範囲が被ってんのかくらいにしか思わねーけど、さすがに出張先でまで見かけたら、おかしいと思うだろ」

 「……出張先?」

 その言葉に、首を傾げる。
 おかしい。わたしが彼を見かけるのは、主に会社の最寄駅の一帯だけだ。
 それに、最近外出らしい外出もしていないはずなんだけど。

 「あの……ちなみに、どこにご出張されたんですか?」

 彼からすれば、白々しい質問だったのだろう。思いっきり見下されていると分かる目で睨まれながら、「広島」と、一言。

 (……た、確かにそんなに遠いところで見かけたんじゃ、そう思われてもしかたがないけど。だけど!)
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