面倒くさい恋愛劇場
 「……悪い。完全に、人違いだ」

 明らかに、落ち込んだ様子の彼に、理由もなく慌てる。
 
 「いや、わたしの話だけで完全に人違いするのも、どうかと……」
 「じゃ、今からあんたの妹とか、友人にアリバイ確認してもいい?」
 「え? それはもちろん」
 「即答するってことは、本当ってことだろ。受け答えに不自然さもないし」

 はぁーっと、ため息をついて、ちくしょーと呟く姿に、何か慰める言葉はないかと探す。
 (わたし、そういうの得意じゃないんだけど)

 「まぁ、わたしも、カッコイイなぁって、見かける度に思っていたし、何度か見かけた場所に行くときには、いないかなぁっていつもより周囲を見渡したりしてたから、勘違いされてもしょうがないかなって思うし」
 「何それ。恋愛は面倒くさいんじゃなかったの?」
 語外に、俺を好きってことじゃないのか、という言葉が見え隠れする。
 随分、自信家だと思うけれど、この顔じゃ仕方がないかもしれない。
 「恋愛は面倒くさいですよ。でも、あなたは、虹? みたいな存在で……」
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