≡ヴァニティケース≡
「そう。でも本当にいいのかい? ほら、ここの和菓子は若い子にも大評判なんだよ?」
「先生……有り難う……ござ……」
言い掛けたところで涙が溢れてきた。悪戯っぽい上目遣いで自分を見詰める石田に、言いようもない感覚が湧き上がってきたのだ。気付けば嗚咽を漏らしている自分が居た。美鈴が落ち着いたのは散々泣いたあと、時間にすれば15分は経っていただろうか。
「……ぐすっ……お茶を、お熱い内にどうぞ……」
漸く気を取り直して、自分へのご褒美として買い置きしてあった極上の煎茶を石田に振る舞った。
「……という訳なんです」
そして図書館で調べた事実と、そこから導き出した推理を精一杯説いた。今まで溜め込んでいた鬱憤を晴らすかのように話したので、説明が終わった頃には外の闇もすっかり濃くなっていた。