≡ヴァニティケース≡
「もしかすると私と鈴奈さんは、極々近い血縁関係にあるのではないでしょうか?」
「ふむ……でも美鈴くん。まあほら、考えてもみたまえ。君のご両親は二人とも沖縄だった筈だろう? 京都とどんな関係が有るんだい?」
そう、美鈴は東京の短大に入るまではずっと沖縄で暮らしていた。地元の造り酒屋では中堅所の大城酒造が彼女の生家だ。幼い頃、同級生と遊んだあの白い砂浜が、青い海が、京都であろう筈もない。
「ええ。でも、伊藤鈴奈さんのご主人は美治さんって仰るんです。両親の漢字を取って美鈴と名付けたとすれば、鈴奈さんは私のお母さんかも知れないとは思えませんか?」
美鈴は今まで自ら避けてきた筈の結論を石田にぶつけていた。さすがに図書館で調べた程度の情報で、血縁関係まで疑っていた訳ではない。ただ、考えれば考えるほど、自分の直感に何か確かなものが含まれているような気がしてならなかった。