≡ヴァニティケース≡

「まずいぞ! 俺達の車はどこだ?」「駅裏の駐車場です」「それじゃ意味がねぇ!」


 護衛を任されていた者として、拉致される危険を考慮していなかったのは不手際に過ぎる。依頼人になんと言われるかを思えば塚田は胃が痛くなった。仮にボスがジョーカーだったら殺されてしまうほどの大失態だ。実際の話、その時は正義のコウモリ男に寝返りたくもなるだろう。


「塚田さん。大丈夫ですよ」


 すると、仲間の一人が手を挙げながら一歩進み出てきた。


「なんだてめぇ、こんな時にニヤニヤしやがって」


 塚田はその余裕綽々の表情が気に入らなかった。今はジョーカーに知られる前に、一刻も早く彼女を取り戻さなければならないのだ。馴れ合っている猶予などない。



< 201 / 335 >

この作品をシェア

pagetop