桜ちる

櫻子が、生きていれば三十歳であった。
相沢も四十歳になった。

五年はあっと言う間であった。

今朝の夢の櫻子は笑っていた。

昨晩の悲しみが嘘のようであった。
桜が散るのを唯美しいと思えるようになったら、
相沢が育った家に帰ろうと思った。
今はまだ二人で掃除をしたり、
櫻子が背中にしがみついてきた感触に悩まされるようでは
帰れないと思った。
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