恋イチゴ


希祈は素直で、ものすごく正直だ。
友人はそれを、バカ正直ともいう。
正直の上にバカが付くのだから、褒められているのか、けなされているのか複雑なところだ。

もちろん、"バカ"正直な希祈は、それを褒め言葉だと受けとめる。

バカ正直で素直、一見プラスな性格のようだが、マイペースで不器用が付け足されると、マイナスな性格にもなってしまう。

親友の奈津から言わせれば、希祈はバカ正直で素直でマイペースで不器用、なのだ。

本人もそのことがわかっていて、そのマイペースな部分と、素直な割りには不器用な点に、時々自己嫌悪に陥らされる。



図書室の奥にある、少し不気味な数ある棚を1つずつ確認する。
薄暗いせいか、物音1つしない図書室に1人でいると、時々背中がゾクッとする。


早く帰りたい…

そう思えば思うほど、焦り、心臓の音が早くなる気がした。
唇を噛み締めてゆっくり呼吸をした。


この不気味な図書室に飲み込まれてしまうのではないか…。


首が痛くなるほど上を向いて、下を向いて探す。

本当にこんなところにあるのかな…

自分だけに無理な任務を下した古典の先生を恨みかけた、その瞬間だった。


「……あっ…!」

希祈は思わず声をあげた。

誰もいないしんみりとした図書室に、希祈の声が響いた。
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