Distance‐マイナス5cm‐
いつの間にか日は暮れて、辺りは真っ暗になっていた。
公園には外灯が一つだけ、頼りなさげに灯っていた。
あたしはベンチに座り、手にはつぶ入りのオレンジジュースが握られている。
いつから握ってたのかな?
口の開いていない缶ジュースは、もう温くなっていた。
横目でちらッと隣を見ると、叶チャンの横顔が外灯に照らされていた。
叶チャンは無言で、空を眺めていた。
それにならい、あたしも空を眺める。
そこには弱々しい光を放つ星達が、夜空に散りばめられていた。
「……きれー」
あたしがそう呟くと、叶チャンは振り向いた。
ずっと、隣に居てくれたんだね……。
「ありがとう」
「……もう慣れた」
そう言って叶チャンは、眉を歪めた。
何だか、前にも同じような事があったね。
どれくらい前だったか……
あたしの世界はまだ狭くて、こんな近所の公園に行く事すら冒険で。
でも、着いたのはイイけど帰れなくて。