ジェフティ 約束
 やがてシェシルは、鍵とぼろ布に包まれた長い荷物を受け取ると、きしむ階段を上り始める。
「なあ、あのカウンターの奴になんて言ったんだよ」
「私は今気が立っているから、静かにしておいてくれ。それから……」
 階段の途中で立ち止まると、下のフロアでまだそわそわしている男に指を突きつけてこう付け足した。
「馬が盗まれないように、裏の厩につなぎ直しておいてくれ」
 男は飛び上がって、慌てて入り口の扉をくぐり外に飛び出していった。
 ラルフは気の毒にと、怯えまくっていた男の心中を思う。
「それって半分脅迫だよ」
 きっとさっきのマスターと同じように、最初は部屋を借りることを断られたに違いない。
「なにをいう、私はちゃんとお願いしたぞ」
 失礼なと言わんばかりの口調だ。
 ――どこがだよ。
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