ジェフティ 約束
 アスベリアは、ナーテ公が今夜の宿として陣取った場所――国王の間――の前の大きな扉の前に立った。ここは、アスベリアに与えられた部屋とは雲泥の差。すべてが豪華で贅を尽くされた調度品で埋め尽くされている。
 繊細な彫刻を施されたダークオーク材の分厚い扉は、ぴったりと閉じられているが、その中からは陽気な音楽と華やかに笑う女たちの声が漏れ聞こえてきた。
 ――女?
 アスベリアは、ここがまるで娼館かのような騒ぎの扉の前で一瞬呆然と立ちすくんだが、やがて気を取り直すと、その扉をゆっくりと拳で三回ノックした。
 何の反応もない。相変わらず女たちの賑わしい笑い声や、歓声が扉の向こうからもれ聞こえてきた。
 アスベリアは小さく息を吐くと、もう一度扉を叩こうと片手を持ち上げた。とその時、扉が内向きに開き始め、先ほど馬上からアスベリアを見下ろしていた男がその間から顔を出し眉をひそめた。
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