ジェフティ 約束
 ラルフには、女の言っていることが理解できずにいた。泣かないと傷が深くなるのはなぜか。しかし、あと少しでその答えが自分の中から生まれるような気がして、ラルフはその言葉をそっと記憶の奥底に刻む。
 押し寄せる悲しみで硬く握り締めていた両手から力が抜けていった。そして、女の不器用な優しさに触れて、ラルフは声を上げて泣くことができたのだった。

 いつの間にか、泣き疲れて眠ってしまったのだろう。ラルフはふと目を覚ました。
 辺りは明るくなり、頭上に覆いかぶさっている木の枝の間からは、温かな日差しがラルフの頬に落ちてきた。目の前の焚き火の炎もとろとろと、炭になった木片の端をなめている。
 辺りには女の姿は見当たらなかったが、ラルフの傍らに大きな荷物が投げ出してあるところを見ると、ただどこかへ出かけているだけのようだ。
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