First xxx.

合コン


 木曜の夜は明日の合コンに向けて美容に手をかける。りっちゃんの情報によると明日のお相手はIT系。あたしも仕事とプライベートでよく使っているブログの会社に勤務していて企画部の人達らしい。仕事でウェブPRをした時に知り合った幹事の男の子に友達を誘って合コンをしてと頼まれたんだとか。

 リビングでランコムの美白パックをしながら、最新式のイオンスチーマーのミストに顔を近づける。イランイランの香りにいやされながらいーとしながら表情筋トレーニングをしていると「ねぇちゃん付け焼き刃の美容なんか無意味だ」と弟の蒼史朗(そうじろう)が単語帳を見ながら嫌みを吐く。
 「うるさいよ浪人生のくせに」と言いムンクばりにおーと筋肉を意識しながら口を開くと「難関医学部だから浪人するやつは他にもいるわ。姉ちゃんみたいにお気楽女子大とは違う」と
 「だいたいさ、メンツによってパック変えるとか意味ないんだよ。弁護士と大手の社員とは高級パックのくせに、フリーターとはパックしないって嫌な女だぞそれ」と言いながらソファーに座り寝転がる。
 「だってもったいないじゃん。無意味な飲み会に労力使いたくないし」
 「なら行くなよ。あとさ、美容は日々の積み重ねだ」
 自分こそ模試前のにわか勉強じゃんと思いながら唇をすぼめると、ほう齢線できるからやめろと言い
 「美容液はHAKUとアドバンスリペアナイトだもん。身体の周期によって変えているの。蒼ちゃんも医者目指すならそれくらい覚えときな」と言い目頭を押さえる。
 「皮膚科選ばない限り肌は関係ないし。それに、俺は外科志望だし。つぅかその呼び方やめろ」と言い単語帳をテーブルに置くと「でも、夜更かしのが美肌の的だぜ。もう寝た方がアンチエイジングになるから」と続けた。

 小さい時は泣き虫でいっつもお兄ちゃんの後ろに引っ付いていたくせに、今となっては当時の面影もなく生意気過ぎてなんかムカつく。
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