もう恋なんてしない
急激に近付く距離。
このドキドキする鼓動が聞こえてしまわないかな?

吸い寄せられるように見つめてくる流星さんの瞳に、思わず呟いてしまった。

「流星さんの虹彩って、お花が咲いてるみたい」

虹彩(瞳孔の周り)が、開いた花を連想させる流星さんの瞳。
その、利休鼠の瞳に見つめられて 身動きひとつ出来なくなってしまう。

「そんな風に、僕を見つめてくれたのは…瑠璃ちゃんだけだよ」

本当に?

「今まで付き合ってきた女性は、僕を熱い目で見つめても…その一瞬だけ。
僕を飾りとしてしか見てなかった。
普段、身に着ける…アクセサリーみたいな感覚。
細かい部分や内面まで知ろうとした人なんて、一人もいなかった。
僕の意思なんて関係なくて、自分の持ち物としてしか捉えてなかったんだよ。
まともな恋愛なんて、した事がない」

ふと、史也兄さんの言葉が甦る。

“あいつ、まともな女と付き合った事がないんだぞ?”

< 303 / 369 >

この作品をシェア

pagetop