ロ包 ロ孝 2
「はぁ。出掛けたと思ったらすぐ戻って来たのは、防寒着も何も持って行かなかったからなのね?」

 階上のロッカールームで、林が何やらバタバタと格闘する音が聞こえてくる。

「あああ、重いっ……あっ!」

  ゴン ゴロンゴロンゴ ガッシャン! パリンッ

「うわあっ!」

 防塵機材や防寒具一式を一度に持って降りようとした林は、慌てた所為で手を滑らせた。

彼専用に作らせた、特に大きい毛皮の防寒ブーツが階段を転がり落ち、観葉植物の鉢を破壊してしまったのだ。

「あーあ、ほら。だ、だから荷物用のエレベーターを付けて欲しいって言ったんで、ですよっ!」

 大沢が飛び散った腐葉土や割れた鉢を片付けながら言った。

「ああ、スマン。荷物用リフトな。コマンダーに掛け合ってみてはいるんだが、設備費迄は中々な」

 林も腰を下ろして手伝い始めるが、野木村が時計を見て言った。

「なにやってんの、遅れるわよミッツイー!」

「やべっ!」

 そそくさと外出着を着込むと、今度こそ林は出発した。


───────


  ビィィィン ィン! ビィィィ……

 林が砂を蹴散らしながらうねった丘を飛び越える様は、ジェットスキーを駆って波を楽しむかのようだった。

【ホント、小林君が入ってくれたら助かるんだけどなぁ。バギーはやっぱりデカ過ぎる。こいつが一番扱いやすいよ】

 彼は薄暗い、凍り付いた砂漠をレッド·ネイルの事務所に向けてひた走っている。この日は普段より幾分風も弱く、出発時にもたついた遅れを取り戻せそうだった。

資金力の乏しいブルー·タスクが今度のミッションを成功させる為には、どうしてもレッド·ネイルからの援助が必要だったからだ。

【ああ。でも憂鬱だなぁ、小池に会うのは……】

  パキンッ

 何かが折れる音がしたが、気もそぞろのまま運転していた彼はその僅かな異変に気付かなかった。

【色々俺の為を思って言ってくれたりするのも解るんだが……いちいち嫌味ったらしいんだよなっ】

  カタンッ カタッ カタカタカタカタ……

 異音は連続して起こっているが、林は気付かない。


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