ロ包 ロ孝 2
  カタカタガタガタ……

【あ、余計な事考えてたら遅刻しちまう。急がなきゃ】

 振動が大きくなっても林は気付かず、遅れを取り戻そうとしてスロットルを吹かした途端。

  ゴトン、バリバリバリバキンッ!

 前輪の代わりをしているサンドフィンが土台から外れ、吹っ飛んだ。

「ああっ!……」

 鼻先から砂地に突き刺さったサンドモービルに弾かれた林は、ゆっくりと宙を舞う自分を体感していた。

【なんだ? 何が起こったんだ? 俺は死ぬのか?】

 砂の大地が迫って来て、頭より先に肩を着けようと身体をひねった所から急に、彼は深い暗闇へと落ちて行った。


───────


「……ッツイー? ミッツイー! おいこら林っ! 目ぇ覚ましやがれっ!」

【ノギちゃんはまた、随分男らしいなぁ……】

「……ああっ、ミッツイー。私よ? 解る? 先生、先生ぇっ! 目を開けたわよっ!」

  ドタドタドタ……タ……

 林の耳は膜が張ったように聞こえが悪くなっていた。目を開けても何がそこに有るのかさえ理解出来ない。

【ほんとにノギちゃんは落ち着きが無いんだから……アレッ、ここはどこだ? 息苦しいし、視角が狭くて良く見えない……】

 クレゾールの臭いが鼻を突く。身体に力が入らず、身動きが取れない。

「……おお、本当だ。林さん? 解りますか?」

【うわっ、なんだ? 眩しい。苦しい、眩しいっ】

「ぷはぁっ!」

 林は渾身の力を振り絞って起き上がった。慌てて医師が彼を抱きかかえる。

「そんな急に身体を起こしたら駄目ですよ、林さんっ!」

 林はサンドモービルの事故後、駆け付けたレッド·ネイルのメンバーに依って、民権奪還軍の救護施設へと搬送された。

林から到着を知らせる連絡が入らなかったのを不審に思った野木村が、林と連絡を取ろうと試みたが通じない。

その旨報告を受けた小池は数十人のレッド·ネイルメンバーを出動させ、捜索に当たらせる。彼のサンドモービルは砂地にほぼ垂直に突き刺さっていて、それですぐに発見出来たらしい。


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