ロ包 ロ孝 2
 その後林は何度か睡眠と覚醒を繰り返し、暫くは起きていられるようになっていた。

「集中治療室からは5日で出られたのに、いつまで経っても意識が戻らないんだもの。
 先生も『バイタル的には問題ないのに何故だろう』って頭をひねってたのよ?」

「ああ、そうなんだぁ」

「でもねミッツイー。もうこれ、何度話したか解らないわよ? お馬鹿さんになっちゃったの?」

 本格的に覚醒してから事故の説明を何度もさせられている野木村は、切なそうに林を見ていた。

「じ、事故で脳に衝撃を受けた人はた、大概こんな風になるんですよ。すぐ戻りますって」

 その野木村の肩をポンッと叩いて大沢は言った。

「では、また林さんがお疲れになるといけませんから、一旦ご中座頂いて宜しいですか?」

 医師に促されて廊下に出る野木村達。

「しかしあいつだけはゆ、許せませんね。どうせすぐ無罪放免でしゃ、釈放されちまうんだ」

「私達は非合法組織だから、それは致し方ないわね」

 フリースペースで募集したメカニックの小林は、国連軍の工作員だった。サンドモービルに細工をして、林を亡き者にしようとしたのだ。

「だけど……まさか大沢の勘が当たってしまうなんてね。ハァァァ……」

 野木村は大きく溜め息をつくとガックリ肩を落とした。募集をフリースペースに載せたのは誰あろう野木村自身だったので、責任を感じて憔悴し切っている。

「で、でも皆が俺の意見にみ、耳を傾けてくれたのでじゅ、重要情報が外に漏れなかったのはさ、幸いでしたよ」

 病室の暗い廊下に置かれたシートで話す2人の顔には、しかし安堵の色が見られた。林の意識が戻らない原因が解らずに、手の施しようの無い状況だった事を考えると、格段の進歩だからだ。

「無くなった左手もば、万能細胞で何とか復旧出来るっていうしも、もう心配は要りませんよ。あ、コマンダー。ご苦労さ、様です」

 林覚醒の急を受け、上級指揮官である清水も救護施設に駆けつけて来た。いつも掛けているサングラスが、心なしか迫力に欠けていた。


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