乱反射するプリズム
「あの、ケーキっていくらですか?」

箱を指差しながら言った。ケーキなんて久しぶりに買う。でも、いいじゃない。ちょっと浮かれてない? これくらいいいでしょ。色々な考えが思いが巡る。男性は少し待ってほしいと言うと、近くにあった店へと入っていく。

あの人はあの店のアルバイトだろうか。明日も働いているのかな、帰り覗いてみようかな、なんていうんだろう、不思議なほわほわした感じ。さっきまでの空しさはどこへやら

店から綺麗な箱を持って、あの男性が駆けてくる。近づくたびに胸がときめいてく。私、どうしたんだろうか。

男性が来て、支払いを済ませ、箱を差し出される。満たされた気分。

「ありがとうございました。……あの、よかったらまた来てください」

箱を受け取って、男性を見た。こころなしか頬が赤く見えた。ありがとうと言って、微笑んでみる。すると目があって、2人笑いあう。また礼を言い合って微笑んで、家路へと向かった。

明日も覗いてみよう、帰りに寄ってみよう。今日は、箱を抱いて帰ろう。そして、記念にケーキを食べよう。あの人に出会った記念、私が乙女になった記念として

-END-


次、あとがきという名の反省
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