その仮面、剥がさせていただきます!
王子のとなり
リビングの隣にある部屋に入ると壁にある電気のスイッチを入れる。

壁際にベッド、窓際に机、その横の壁には本棚があるだけのスッキリとした部屋。

机の上はブックスタンドで挟まれた教科書が置かれているだけ、本棚にはタイトルからして小難しそうな本や問題集、そして一番下には卒業アルバムなどが綺麗に並んで配置されている。

ベッドの上の布団だって寝てた感がないほどにぴっちりと整えられていた。

あたしの部屋とは大違いだな……

あまりにもキレイすぎて生活感が感じられない部屋に、少し落ち着かない。

もう寝よ。と電気を消しに行くが、その前にと……

お約束のベッドの下を覗くが、これまた何もない。


チッ。面白くないヤツ……


発見したら発見したでゲッとか思うくせに。あたし、勝手な奴である。


そしてもう一つ気になる物の前に立つ。

本棚の下段にあるアルバムの数々。


どれにしようか迷いながら人差し指を動かしていると、心の中の良い子ちゃんが言った。

『人の物を勝手に見ちゃいけないよ』

そんなこと分かっちゃいるがあたしの知らないリクの姿を見たいじゃない?

『勝手に見たことが分かったらリクに嫌われちゃうかもよ?』

それは困る。

『だったら大人しく寝ないといけないよ』

良い子ちゃんが言うことは正しいけど。けどね。

ええい!

あたしは中学の卒業アルバムを棚から引き出すと膝の上に置いた。

だって、目の前にあるんだもん。見ちゃうでしょ?

カバーを外してドキドキしながら表紙を捲る。クラスごとの個人写真を確認しながら次々と捲っていった。

見たいのは海道陸人ただ一人~

あ……いた。

そこには今より幼くて今よりもっと可愛らしいリクの顔が映っていた。

でも。

表情が硬い気がする。

他のクラスメイトを見ても笑っている顔が大半なのに、リクの顔は違っていた。


笑顔は得意なはずなのに……


不思議に思いながらも貴重なお宝写真が見られた満足感でアルバムを片付けようとカバーを傾けると1枚の写真が落ちてきた。

そこに写っているのは髪を2つに束ねた可愛い笑顔の小さな女の子。

誰だろうと考えたところで分かるはずもなく、写真を元に戻しアルバムをしまった。

やっと電気を消し、ベッドに潜り込むと包まった布団からふんわりといい香りが漂った。

これ、リクの匂いだ。

観覧車でしがみつかれた時に香った爽やかな匂い……

あたしは布団の中で寝返りをうち目を閉じた。

リクが隣にいるみたいでドキドキする。


ううっ。こんなんじゃ眠れないよ……

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