揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
私達は、そんな彼の後ろ姿を黙ったまま見送っていた。


しばらくすると、大翔君とは反対の方向に真吾がゆっくりと歩き出し。

私も隣に並んだ。


まさか、こんなとこで会っちゃうだなんて。

運がいいのか悪いのか……。


「彼は、デートじゃなかったんだね」


そう言って、真吾は少し笑った。

私も、つられて愛想笑いを浮かべる。


「それにしても、ホント心配したよ?もしかして先に帰ったのかな、って」


「そんなっ、先になんて……」


「俺とつき合ってる事、後悔してるんじゃないかって思ってたんだ」


私の言葉を遮り、彼はそう言った。


真っ直ぐな眼差しを受け。

何か言い返さないとって思いつつ、うまく言葉が出てこない。


何言ってるの?

後悔なんてしてないよ。


そんな言葉で、真吾は納得してくれるだろうか?


「由佳の好きな人って……」


その言葉に、やましい想いを抱えた胸が騒ぎ出す。

ドクンドクンと、激しく脈を打ち続ける。


「今の…彼だよね?」


バカ正直な私の体は、足を…止めてしまった。

『え?違うよー』って笑い飛ばしたいのに、体がすくんで動けない。


話す事を忘れたかのように、口も役に立たず。

思い切り否定したいのに、動かない全身が肯定を意味してしまっていた。


「……やっぱり」


そう言って、真吾はため息を一つもらした。


えっ?『やっぱり』……?


「ごめん。実は、前から気付いてた」


「えっ?」


やっと、声が出せた。


「映画館で会った時。彼の前での由佳は…女の子だったから」


「女の子?」


「好きな人の前だと、女の子って変わるよね?そんな感じがしたんだ」


バレてたんだ……。

とっくにバレてて、それでも真吾は気付かないフリをしてくれて。


こんな未練がましい女に…つき合ってくれてたんだ。
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