揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
「だからって、由佳と別れるつもり無いし、縛り付けるつもりもないから。逃げるみたいだけど…由佳が決めていいよ」


「……」


「俺とこのままつき合って、彼を忘れようとするのか。それとも俺と別れて、彼に想いを伝えるのか」


「真吾……」


あなたは、それでいいの?

こんな私の我儘に振り回されて。


立ち止ったままの私達の横を、たくさんの人達が通っていく。

楽しそうに手を繋ぐカップルの姿を見ると、今の自分達と違いすぎて泣きそうになってくる。


2人の間に、やましさがないから。


だからきっと、あんな風に笑えるんだろう。

心から、相手を好きだから。


やっぱり、これじゃダメなんだよ……。


「ごめん……」


口を開くと同時に、目から涙も零れてきた。

一度溢れた出した思いと涙は、もう止められない。


「ホント、ごめんね……」


それしか言えないのが、もどかしい。

もっときちんと謝りたいのに。


たぶん、このまま真吾と一緒にいても。

私は大翔君を忘れられない。


だから、ちゃんと彼に想いを伝えて…振られなくちゃいけないんだ。


「……一つ、言うの忘れてた」


そう言った真吾の顔は、涙越しに見てもとても優しかった。


「……?」


「さっきの選択肢、もう一つあるんだ。彼に振られたら、俺の所に戻って来るっていうの。どう……?これ、良くない?」


ホントにこの人は……。


どれだけいい人なのよ。

嬉しすぎて、余計泣けてきちゃうじゃん。


「真吾は…優しすぎるよ」


そう言った私の頭を優しく撫でながら、


「そうでもないよ?実は、由佳が振られたらいいなって思ってるし」


と言って、彼は軽く舌を出した。


「振られるに…決まってるよ」


私も、涙を流しながら笑ってそう答える。


「じゃあ、その時は戻っておいで」


そして、彼は優しく私を包んでくれた。


大きくてあったかい胸。

真吾そのもののような気がして、とても居心地が良かった。


ホント、ありがとう……。
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