揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
「っていうか、なんか…慣れてない?」


これは、明らかに拗ねてる顔。


「こんなにキスしたいと思うのは、由佳さんだけですよ」


そう言ったら、また顔を赤くして照れている。

まどかさんや梨香にはない可愛らしさ。


それが、とても愛おしい。


ずっと想っていた人が、自分の事を好きでいてくれた。

それが、こんなに幸せな事だったなんて。


「……みんなにそう言ってるの?」


「『みんな』って、誰にも言ってないですよ」


「でも、水沢…さんには言ってるんでしょ?」


梨香の事を気にしてるんだ……。


そりゃそうだよな、俺と梨香はつき合ってるんだから。

でも……。


「梨香とは、別れますから」


「えっ!?」


「梨香とは、別に好きでつき合ってたわけじゃないし。由佳さんが俺を想ってくれてるなら、アイツとつき合う意味もないし」


梨香とは幼なじみだったから、自然とつき合ってた。

まどかさんに誰か見つけろって言われて、一番身近にいたアイツを選んだだけで。


恋愛感情は、無かった。


「私も…真吾と別れたから」


「えっ?」


それって、俺の予想通りってやつ?

俺が原因で2人が喧嘩をしてしまう、っていう。


軽い罪悪感が胸をよぎる。


「あっ、大翔君のせいじゃないよっ。悪いのは、私なの。大翔君が好きな気持ちを、真吾とつき合う事でごまかそうとしてたんだから。ホント、私って最低……」


そう言って落ち込む彼女を、再び抱きしめた。

今度は、さっきよりも優しく。


「俺も…一緒ですから」


そう、囁く。

俺だって、自分の気持ちを誤魔化して2人と関係を持っているから。


俺達は…一緒なんですよ。

好きだからこそ、この関係に悩まされていたんだ。


でも、もう大丈夫だから。
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