揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
最後に深呼吸を一つして、私は受話器を上げた。


「はい、吉野です」


『私、水沢って言います。今そっちに、神崎大翔が遊びに行ってると思うんですけどっ』


捲し立てるような早口。

切羽詰まってる感じのその声は、確かに水沢だった。


彼女に対してめちゃくちゃやましい事のある私は、心中がかなり穏やかでない。


「あ、えっと、来てる…かな?」


答える言葉が、どうにもぎこちない。

つい今の今まで体を重ねていた相手の名前を出され、動揺を隠せない自分がいる。


『さっきから携帯鳴らしてるけど、全然出てくれなくてっ』


怒っているらしい声。

電話に出れない原因が自分にあるとは、とてもどゃないけど言えない……。


「そ、そうなの?」


『もう一度鳴らすから、ちゃんと出るように伝えといて下さいっ!』


そう言って、一方的に電話は切られた。


や、ヤバイ事になってきたなぁ……。


慌てて、私は階段を駆け上がった。


ドアを勢い良く開けると、大翔君はベッドに腰を下ろしていて。

入ってきた私を、上目づかいに黙って見てくる。
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