揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
あと2時間か……。


昼ご飯は駅の近くで一緒に食べるから、とりあえず時間に余裕はある。

俺は携帯を手にすると、リダイアルボタンを押して発信した。


トゥルルルルルル……


呼び出してはいるものの、電話に出る気配がない。

この間から、ずっとこうだ。


諦めて、俺は電話を切った。

それと同時に、インターホンが鳴る。


まどかさん、忘れ物したのかな?


そう思いながら玄関の扉を開けると、そこにいたのは…梨香だった。


「上手い具合にロビーのロックが開いてたから、そのまま上がってきちゃった」


セキュリティのしっかりしているマンションだから、通常は外部からの侵入には居住者の許可がいる。

部屋番号を押して、相手がロックを外すといった具合に。


ただ、中からは自動で開くので。

誰かが出る時に、こっそり入って来れない事も無い。


梨香も、今までに何度かそれをしている。


「丁度良かったよ。今も電話したところだし」


そう言って、俺は携帯をひらひらとさせてみる。

そんな俺をじっと見上げながら、梨香はおもむろに腕を組み始めた。


「……やっぱり、納得いかないんだけど」


明らかに、口調がきつい。

顔も怒り気味だ。


「とりあえず、入って」


そう言って、奥を指差した。


玄関のドアが開いたままだから。

こんなトコで痴話ゲンカなんてしてたら、人目につきかねないし。


「あの人は?」


少し小さめの声で、梨香が尋ねる。

この場合の『あの人』は、もちろんまどかさんの事だ。


「出かけてるよ」


来客用のスリッパを梨香の前に並べ、俺はそのまま奥のリビングへと向かった。

後ろでドアの閉まる音がして、しばらくすると梨香の歩く音が聞こえてきた。


リビングのソファを指差し、梨香を座らせ。

そのままキッチンに向かい、アイスコーヒーを冷蔵庫から取り出してグラスに2つ注いだ。


ブラックのままの俺と、ガムシロとミルクを入れる梨香。

2つの色の違うグラスを手にして、俺はソファに向かった。
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