揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
「何で、いきなり別れ話されなきゃいけないの?」


グラスをテーブルに置く瞬間、梨香がそう尋ねてきた。


「言ったろ?好きな人ができたからって」


「それって、随分勝手じゃない?私が何年大翔と一緒にいたって思ってるの!?」


きっ、と上目づかいに睨まれる。

一緒にいた年数なら、梨香は誰よりも長い。


でも、好きになるのは年数じゃない。

たった1カ月で、俺はこんなに由佳さんを好きになったんだから。


「悪いけど梨香の事は、恋愛として好きだったわけじゃないから」


「……何それ?」


「幼なじみの延長でしかないんだよ」


「……」


テーブルを挟んで向かい合う俺達に、しばらく沈黙が流れた。

何か言いたげに俺を見ている梨香と、アイツの言葉を待っている俺。


視線は絡んでいるけれど、もう心は絡んでいない。

いや、最初から絡んでいなかったのかもしれない。


母さんが死んだ淋しさを、俺は梨香で埋めようとしてただけなんだ。


「……言うから」


ふいに、アイツが口を開いた。


「私、大翔に犯されたって言うから」


そう言って、梨香はゆっくりと立ち上がった。


「誰にだよ?」


そう尋ねる俺を見下ろしながら、梨香はおもむろに服のボタンを外し始めた。


「うちの親にも、学校の先生にも、その相手の女にも」


そして、服を脱ぎ捨ててキャミソール姿になった。


「あれは、お前が抱いてくれって言ったからだろ?俺が無理にヤったんじゃない」


「そんなの、誰も信じないわよ」


そう言って勝ち誇ったように笑うアイツは…女の顔だった。

小学生の女子じゃなくて、まどかさんのような女の顔。


初めて、梨香を怖いと思った。
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