揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
「じゃあ、最初だからオマケしてあげるよ。その代わり、明後日の試合…応援しに来て?」


私の抵抗が効いたのか、彼はそう言って私の膨らんだ右頬を指でつついた。


「観に行っていいの?」


久しぶりの、彼の試合。

4月の初めの練習試合以来かな?


「うちの学校でやるし。今度は、携帯なくさないでよ?」


そう言って、彼は優しく笑った。

そういえば、あの時に私が携帯をなくして…彼が探してくれたんだった。


「そんな、何度もなくさないからっ」


でも、あの時なくしてなかったら。

こうして、彼と一緒にいられなかったかもしれなくて。


そう考えると、人生って何が起こるか分からなくてホント面白い。


「今度は、ちゃんと最初から見ててね」


「えっ?知って…たの?遅れて観に行ったの」


諒斗達のバスケの試合と重なったから、終わる直前に着いた私。

大翔君の打席の前に着いたけど、彼の出番は最後なくなってしまったんだっけ。


「初めて会った時から、ずっと見てたよ」


すぐそばにある彼の双眸が、真っ直ぐに私を捕えている。

その表情があまりにも真剣で、私の胸はドキドキせずにはいられなかった。


私と…同じだったんだね。


あの始業式の日の出会いから、私達はお互いに想い合っていたのに。

随分と遠回りをしてしまってたんだ。


「私もだよ。あの時から、ずっと見てたんだよっ」


「……誰を?」


「大翔をっ!」


今度は、騙されない。

ちゃんと彼の名を呼んだ私に優しい笑顔を見せると、


「これからも、俺だけを見てて」


そう言って、彼は唇を重ねてきた。

舌で私の口内を舐めつくされると、体の力が自然と抜けていって。


溶けてしまいそうな甘いキスがあるという事を、私は今日彼に教わった。


まだまだ、彼に教わる事はたくさんありそうだ……。
< 276 / 298 >

この作品をシェア

pagetop