揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
「だから、諒斗とはつき合わないから」


「……知ってんのかよ?あのガキは」


言いたい事は、分かっていた。

≪諒斗に処女を奪われた事を、大翔君が知ってるのか?≫っていう事だ。


「全部、話したよ。それでも、彼は私を好きだって言ってくれた。別れたくないって言ってくれたんだよ」


昨日の大翔君を思い出す。


こんな私を、ちゃんと好きだって言ってくれた。

別れたくないって言ってくれたんだ。


だから私も、何があっても彼とは別れない。


「……相手は小学生なんだぞ?」


「そんなの関係ないよ」


「お前は俺に抱かれたんだぞ?」


「それは、私の意志じゃない」


凝視してくる諒斗に負けじと、私も見つめ返す。

ここで、気持ちで負けるわけにいかない。


「何で…アイツなんだよ?俺や真吾じゃなくてさ」


先に目を逸らしたのは、諒斗だった。

フェンス越しに見える屋上からの景色に、視線をゆっくりと移していった。


「バカみたいって、笑うかもしれないけど」


私も、同じ景色に視線を移した。


駅の辺りの高い商業ビル群が、ここからでもよく見える。

無機質な感じのその景色は、眺めていても楽しくはなかった。


「運命だって…思ってる」


そして、私は諒斗の横顔にそう告げた。


子供じみてるかもしれない。

バカげてるかもしれない。


だけど私にとっては、彼と出会えたのは運命なんだ。


「……そんな事言われたら、どうしようもできねぇじゃん」


ははっと乾いた笑いを零すと、アイツはゆっくりと私に視線を戻してきた。


目を潤ませているその顔に、思わずハッとしてしまって。

初めて見る諒斗の涙は…私の胸をズキンと一刺ししてきた。
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