揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
屋上に着くと、ぼちぼちの人の数だった。


幾つかあるベンチは既に座られていて。

とりあえず、端の方で直に腰を下ろして食べる事にした。


「相変わらず、由佳の弁当は美味そうだな」


そう言って、諒斗は私の卵焼きに手を伸ばしてきた。


「……相変わらず、諒斗も卵焼き好きだね」


パクッと一口で食べてしまうのを見ながら、私は軽く溜息を一つ吐いた。


中学の時から、諒斗にはよく卵焼きを食べられてたっけ。


「俺、甘い卵焼きって苦手なんだよ。由佳のは出汁が効いてるから好きなんだ」


最初の時も、確かそう言ってた気がする。

久しぶりな光景に、ちょっと懐かしさを感じてしまった。


だけど今の私達は、あの時とは確実に違っている。


「あのさ、諒斗」


言いにくいけれど、私は勇気を出してそう声を掛けた。


「何?」


「その…さ」


右手に握った箸が、小刻みに震えている。


怖いような、恥ずかしいような、不安なような。

いろんな感情が入り混じって、うまく言葉にできなかった。


「俺と、つき合う気になった?」


その言葉に、俯かせていた顔を思わず上げていた。

おかげで、諒斗とバッチリ視線がぶつかって。


「……そんな話じゃなさそうだな」


そう言ったアイツの笑顔は、どこか淋しげに見えた。

そのまま、購買で買ったツナサンドを食べ始める。


「私、大翔君とヨリ戻したから」


私のいきなりな発言に。

諒斗はサンドイッチを咥えたまま、慌ててこっちを見てきた。
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