揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
「あれ……?」


時計代わりに携帯で時間を見ようとしたら、持っていない事に気付いた。

ポケットにも、鞄の中にもない。


「何やってんだよ?姉ちゃん」


4人で家に帰ろうとしたところだったから、みんなが立ち止って私を見ている。


「携帯が無くって……」


最後に見たの、いつだっけ?

こっちの駅に着いた時には見たよねぇ?


「ちょっと探してみるから、先に帰ってて」


「そう?じゃあ、先に帰ってるわよ」


そして、3人は家に向かって行った。


ここから家までは5分ぐらいだから、別に帰っててもらうのはいいんだけど。

携帯が無いのって困るんだよね。


どこで落としたんだろう?

とりあえず、来た道を戻るしかないか。


ベンチから、ゆっくりとした足取りで辿って行く。

下を向いてきょろきょろしている私は、きっとまた不審者なんだろうな……。


そんな事を考えながら辿り着いた東門の辺りには、低い木がたくさん生い茂っている。


走って来たから、この中に入っちゃったとか……?


痛そうな枝っぷりだけど、仕方なく私は手を突っ込んで中を探った。

手に刺さってくる枝がかなり痛かったけど、頑張ってかき分けてみる。


だけど、すぐには見つからない。


「どうかしたんですか?」


ふいに背後から声を掛けられ、私はビクッとしてしまった。


「いぇっ、そのっ携帯落としちゃって……」


作り笑いを浮かべながら振り向いた先にいたのは……。


驚いたことに、まさかの大翔君だった。
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