揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
「じゃあ、ごめんねっ」


だんだん、この空気に耐えられなくなってきて。

私は、そう言って電話を切ろうとした。


そうしたら……。


『お姉さん、名前何て言うんですか?』


通話を切るボタンを押そうとした瞬間、そんな言葉が耳に飛び込んできた。


「へ……?」


一瞬、意味が分からなくて。

つい、変な声を出してしまった。


『また間違えてかかって来てもいいように、登録しておこうと思って。名前…聞いてもいいですか?』


「はっ、はいっ、全然いいですっ」


思わず、舞い上がってしまった。


だって、私の事を登録してくれるだなんて……。

削除されてもおかしくないのに。


『あ、良かったら俺も登録しといて下さい。神崎 大翔です。神様の神と川崎の崎で大きな飛翔の翔です。って、分かりますか?こんなんで』


「うん、大丈夫っ。私は、吉野 由佳。吉野山の吉野で、自由の由で、人べんに土が二つ。わ、分かる?」


『OKです。あとで登録しとくんで、これで間違えても大丈夫ですよ』


私も、慌てて近くにあった紙にメモした。


≪hiro≫から≪神崎 大翔≫に上書きしなくちゃ。

本人公認なら、メモリーに入ってても大丈夫だよね。


「ありがとう。私も…登録しとくから」


なんだか、すごく嬉しかった。


大翔君にとっては、たわいもない事なのかもしれない。

だけど、私にとったらこれは一大事。
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