レモンムスク


今朝も、いつも通りに遅刻せず、教室にやってきた。



「おはよー」


なんて、言わないし、言ってもらえない。

今の声は隣の女子同士の挨拶だった。




私は自分の席について、鞄から教科書やノートを取り出した。



その時だった。





「おはよ」




近くで声がしたから、つい振り返ってしまった。

私への挨拶なんて誰もしてくれない事くらい分かっていたのに。





「あー春樹ー♪おはよう♪今日もかっこいいね。」





隣にいた女子がその男に会うなり、ベタベタとくっついて話しはじめた。




「何、田口が振り向いてんの。ウケるんですけどー」



女子は私を指差してケラケラと笑っている。

こんな事言われるのは慣れてる。
可愛いとか言われること以外は。




でも、その時あることに気づいてしまった。
私の敏感な鼻が。


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