添い寝屋
繁華街を抜けて、細い路地を抜けたあたりに
小さな灯りがポツンとある。


カラカラと乾いた音がする
その引き戸の音は
妙に懐かしく温かい気持ちを誘う




部屋の中のオレンジ色の明かりの下に
その男は今日も座っていた。



雨音がやけに響く夜だ。



「もう終いにしようか」


そうつぶやきながら立ち上がると

男は真っ暗な空から落ちてくる
見えない雨粒を見上げながら
看板の明かりのスイッチを切った。



『添い寝屋』と書いた小さな灯りが消えた。
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