トマトときゅうり


「はい。・・・えーと、14日の木曜日。動いてる面接士さんは二人しかいませんからちょっと微妙かもですよ?」

 面接士とは、医者の変わりに保険契約者に健康状態などを聞く専門職のこと。

 面接士ですませることが出来れば、健康診断表をもっていないお客様にわざわざ病院まで出向いて貰う必要はなくなる。営業としても病院まで着いていく手間が省けるので、面接士さんにお願いする方が楽なのだ。

 病院で検査が必要ですとお客様に告げた時、非常に迷惑そうな顔をされるのが本当にいつでもビビるって青山さんも言ってたな。

 それで契約がなくなるんじゃないかと思うらしい。

「取れなかったら仕方ない。トマトに文句言わないからやってみて」

「・・・させて頂きます」

 仕事ですからね、勿論。

 一応また笑顔を見せておいて、面接士さんの電話番号をプッシュする。

 面接士はみんなフリーで動く専門職の為、事務が個人的に電話をしてアポをとるのだ。

「もしもし、多田さんですか?北事務所の瀬川です、お疲れ様です」

 電話をかけてる間、きゅうりは時間があるのかカウンターにひじをついてそのまま待っていた。

 お願いする時間がタイミングよかったようで、アポを取ることが出来た。電話でお礼を言い、書類に書き込んで、きゅうりに渡す。

「取れましたよ、多田さん。14日の午後4時に中央橋口駅で拾って下さいね」

「お、良かった。ありがとう。―――――――あのさ、お前・・」


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