トマトときゅうり


「って、何考えてるのよ」

 不埒なことを考えた自分の頭を拳骨でどつく。駄目駄目、そんな、意地汚い!

「何か言った?」

 こぶしを突き上げて、いい男を捕まえる必要性を喋っていた仲間さんが、こっちを見た。

「いえいえ、独り言です。えーと。・・それじゃあ、頂きます。折角ですし」

 にっこりと微笑んで仲間さんが渡してくれた付け睫毛を見る。

 ・・・乙女だ。あの、買いたかったドレスなら、このくらい睫毛長くてもいいと思えるんだけどなあ~・・・。うーん。

 仲間さんが簡単につけ方を教えてくれたので、会社のトイレでつけてみた。

 そしたらあまりにも可憐な表情になって、真面目にビックリした。

・・・私、化けれんじゃん・・・・。化粧品て、凄い。

 ついでに真紅のグロスも指先に少しだして唇の真ん中に乗っけてみる。
上下をこすり合わせて色を混ぜてみたら、何だか色っぽくなった自分が鏡の中にいて、恥ずかしくなった。

 うーん・・・私って化粧っ気ないもんなあ・・・。

 席に戻って仲間さんや事務仲間に披露してみたら、案外好評で、照れたけど、嬉しかった。
 これが女力アップってやつかなあ~。女性に褒められると嬉しい。

「瀬川さんの、素朴な、自然の美、みたいな可愛さも本当に素敵だけど、化粧をして大人っぽくなるのもいいわ~!イメージがかなり変わるわね、睫毛と唇で」

 大井さんが手放しで褒めてくれる。


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