トマトときゅうり

 私の目からは涙が溢れ、丸い玉となって転がり落ちる。

 涙で霞んだ視界で、ゆっくりときゅうりを振り返った。

 きゅうりは驚いた顔で凍り付いていた。

「瀬川・・・?」

「・・・・もう・・・」

 声を出すと、嗚咽が出てきそうになる。口元を両手で押さえた。

 きゅうりの前では笑うと決めたのに。

 そんなこと、もう出来そうもない。


「・・・もう、私で・・・遊ばないで」


 いつものように、顔は真っ赤だっただろう。しかも涙をガンガン流していて、唇も腫れてる上にマスカラも全部流れていたハズ。

 世にも酷い顔で、私は車を飛び出した。

 後ろできゅうりが何か叫んでいたけど、聞こえるのは自分が漏らす嗚咽と早い鼓動だけ。

 凄い勢いで階段を上る。

 廊下を疾走して―――――――――――


 私の避難所、部屋へ逃げ込んだ。




< 195 / 231 >

この作品をシェア

pagetop