トマトときゅうり


 事務席へ直通の電話をかける。

 仲間さんのまったりとした優しい声が、社名を告げた。咳払いをひとつして、話しだす。

「・・・おはようございます。瀬川です」

『あら、瀬川さん?おはよう、どうしたの、酷い声ね』

「はい・・・すみません、自己管理がなってなくて・・・風邪を引いてしまったんです。熱もあるので、今日はお休み頂けますか?」

 ああ・・・仲間さんのハッピークリスマス話聞きたかったなあああ~・・。

 ガックリと肩を落とす。昨日までは楽しみにしていたその話もこんな状態では聞けない。

『あら、それは大変。うん、こっちは大丈夫よ、今日は新契もそんなに出ないと思うし。熱は高いの?大丈夫?』

「まだ8度まで行ってないから、大丈夫だと思います。土日もあるんで、3日間で治します・・・すみません」

『はーい、じゃあゆっくり休んでね~』

 優しい仲間さんの声にちょっと励まされて、電話を切った。

 恐る恐る確認すると、留守電は5件。相手はきっと、簡単に思いつく、あの男だろう。・・・・・聞く勇気も元気もない。

 今度は放り投げずに、布団の下に携帯を隠した。

 さて、と。

 スープでお腹もあっためたし、もう一眠りしましょ。布団に潜り込んで毛布ですっぽり体を覆った。



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