あやまち
「全然泣きたくないけど」


「……」


「麻希?」




何も言わない麻希の顔を覗き込むと、眉をハの字に曲げていて……



でも、そのまま口許に少しだけ笑みを浮かべながら、ようやく口を開いた。




「……悠亜……、あたし、明後日がバイト休みなんだ。ショッピングに付き合ってくれない?」




麻希のこの言葉に即「うん!」と頷きたかった。



でも……



ちらっと翔太の様子を伺う。




「……!」




睨むような鋭い視線を向けていた。



やっぱり、ダメなんだ。



唇をきゅっと噛み締めて……




「麻希、……ごめ……、その日は、無理かな」




そう言うと、胸がズキンと痛み、目の奥が熱くなってきた。



ヤバい……



涙がこぼれる――…




「ごめっ、ちょっとトイレ……」




慌てて立ち上がって、その場から逃げるようにトイレへ向かった。



中に入って、鍵を掛けた途端……



涙腺が壊れたように、涙がぶわぁーっと溢れてきた。

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