あやまち
「聞いてた、のか?」




瞳を揺らしながら話す翔太に、あたしには聞かれたくない話をしていたんだと悟る。




「少しだけ」


「少し?」


「うん」




そう言って、部屋に足を踏み入れ、翔太の隣に座った。



あたしが入ってきたことで、その場は沈黙になり、気まずい空気が流れた。



どんな話をしていたんだろうと気になりながらも、それを聞けない。



隣であたしの様子をうかがうような仕草を見せる翔太を見ていたら……



今がチャンスなのかもしれないと思った。




「翔太」




ただ名前を呼んだだけなのに、翔太は体をビクンと揺らしながら、ゆっくりとあたしの方へ視線を向ける。



これから言う言葉で、翔太がどんな反応を見せるのかが怖くて……



どきどきしながら、ゆっくりと口を開いた。

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