あやまち
今までは、あたしにとって渉はずっと気の合う親友だった。


それに、麻希の彼氏という位置だった。


それでも、そんな麻希を前に



『……、やっぱさ、忘れらんねぇんだ……、……悠亜のこと』



堂々と想いを口にする渉に、戸惑いながらも凄く頼もしいって、芯があってカッコイイって、そう思った。


だけど……



『それでも、いい……渉の、傍に、いたいっ』



と、麻希の発した言葉で我に帰った。


あたしの中で、渉は麻希の彼氏として位置付いている。


それが変わってしまいそうで、怖かった。


なのに……


『渉はいろんな女と遊び歩いている』と教えてきた翔太と麻希の言葉が……



『俺と悠亜を引き離すために、おまえと麻希で仕組んだんだろ?』



渉とあたしを引き離すための嘘だったと知って……


ひどく胸が痛んだ。


この胸の痛みは、嘘をつかれたことに対して?


それとも、渉と引き離されたことに対して?


あの時は、その答えが出せなかった。

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