あやまち
でも、もしあれがなかったら……


翔太からコクられたとき、いくら酔っていたとしてもきっと勢いで寝たりしなかった……と思う。


てことは、翔太とはきっと付き合っていない。


だとしたら、渉とは……



「俺は、たぶん……いや、ぜってぇにコクってた。あんなふうに、無理矢理とか、……しなかった」



そう言った渉は、真剣な表情で真っ直ぐに見つめてきた。


その力強い視線に、あたしの心臓はドキンッ――と大きすぎるくらいの音をたてる。



「まあでも、“もし”なんてことを考えても時間は戻らねぇけど」



そう言って、渉は視線をすっ、とそらした。


もしあの嘘がなかったら……


きっと今とは全然違う生活になっていたと思う。


でも、渉が言うように今更“もし”なんて言っても、時間はもう戻らないんだ。

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