あやまち
このままじゃ、あたし……流されてしまう。


って……


流される?


ほんとにそう思ってる?


渉に対して、ほんとになんの気持ちも持っていない?



「……」



……違う。


翔太に束縛されていると知った麻希が、あたしを助けるために『渉に頼んでみる?』と言ったのを、何で断ったの?


どうしてサークルに顔を出さなかったの?


テニスコートで壁打ちをしている渉に、どうしてもっと近付こうと思わなかったの?


……あたしは何でずっと渉に会おうとしなかったの?


それは……


渉に会ったとき、こうなってしまうことが怖かったからだ。


こんな風に強引に押しきられてしまうのが怖かった。


だって……


こうやって、渉への気持ちに気付いてしまうから。





翔太と麻希が嘘をついていたと知ったとき、目の前が真っ暗になった。


渉のことが気になっていたのに、いくら女と遊び歩いていると聞いたからって、翔太と付き合ってしまった自分が許せなかった。


だから無意識に、渉への気持ちを永遠に封印しようとした。








ほんとは、ずっと――






渉のことが好きだったんだ。

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