あやまち
そんな麻希を見送りながら、頭の中には、一昨日の渉の姿が浮かんでくる。



そういえば、麻希の話をしたとき……、素っ気なかったっけ。



でも、いつも通りといえば、いつも通りだったんだ。



麻希の話をすると、渉はいつも黙り込んでしまうから。




「ごめんね」




顔を洗い終えた麻希が、部屋に戻ってきたけれど……




「帰るね」




なぜか、そのまま帰ると言い出した。




「ちょっと待ってよ!話聞かせてよっ!」


「もう、大丈夫だから」


「意味わかんないっ」




あれだけ泣いて、何もないわけがない。



それに、この短時間で、大丈夫になるわけがない。




「ちゃんと話してくれなきゃ、泊まりは行かないからねっ」




ちょっとした賭けだった。



こう言えば、麻希は話してくれると思ったから。


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